コラム

中小企業の生成AI活用は何から始める?|ChatGPTを実務につなげる方法

中小企業の生成AI活用は何から始める?|ChatGPTを実務につなげる方法

中小企業の生成AI・業務活用

ChatGPTを使っているのに、仕事はあまり変わっていない

ChatGPTなどの生成AIを使い始め、分からないことを質問する、メールの文章を整える、画像を作ってみる。そこまではできたものの、会社の仕事が以前とあまり変わっていない。そのように感じる経営者や担当者もいるのではないでしょうか。

質問へ自然な文章で答えてくれることは、生成AIの大きな特徴です。考えを整理したり、自分にはなかった視点を出してもらったりするだけでも役に立ちます。しかし、毎週の集計、問い合わせ対応、日報、申込後の処理、資料作成といった仕事が同じままなら、AIとの会話が日常業務の流れにつながっていない可能性があります。

中小企業のAI活用では、いきなり専用システムを開発する必要はありません。現在使っているExcelやGoogleスプレッドシート、GoogleフォームなどにAIの助けを組み合わせ、一つの仕事を少し進めやすくするところから始められます。

一方、AIを初めて使う人へ、すぐ業務フローの設計や自動化を求めても難しいものです。まず遊びながら特徴を知り、次に自分の仕事へ持ち込み、その後で社内の業務へ広げる。順番を分けると、AIを万能視せず、怖がりすぎず、現実的に使えるようになります。

この記事では、AIの便利機能を並べるのではなく、「会社で困っている仕事」を起点に、生成AIを既存の道具と組み合わせ、実務で再現できる状態へ進める方法を説明します。

中小企業でAI活用が進まない理由は、「何に使うか」が見えていないから

生成AIの名前や機能を知っていても、自社の仕事へ置き換えられなければ、最初の対象を決められません。「文章を作れる」「データを分析できる」「コードを書ける」と聞いても、自社のどの仕事が変わり、誰が使い、何を確認するのかまでは分からないからです。

中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」では、2019年以降の省力化投資について尋ねた調査で、回答企業5,645社のうちAI活用に取り組んだ企業は30.3%でした。AIを活用していない企業3,888社に理由を尋ねると、「活用する業務がイメージできていない」が63.4%で最も多く、「活用を推進する人材が不足している」が40.0%、「社内ルール・ガイドラインが整備されていない」が26.2%と続きます。いずれも複数回答です。

この結果からも、AIの性能を説明するだけでは導入が進みにくいことが分かります。まず、「毎月同じ集計に時間がかかる」「問い合わせが複数の窓口に分かれている」「フォーム回答後の転記が多い」など、自社の困りごとを具体的にする必要があります。

30.3%AI活用に取り組んだ
63.4%活用業務をイメージできていない
40.0%推進する人材が不足している

出典:中小企業庁「2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要」。調査対象と設問が異なるため、三つの割合を単純比較するものではありません。

「ChatGPTを使っている」と「AIを業務活用している」は少し違う

AIに質問する、文章を書き直してもらう、画像を作る。これも立派なAI活用です。ただし、個人が便利に使っている状態と、会社の業務が変わっている状態は分けて考えます。

例えば、担当者がChatGPTでメールの下書きを作れても、問い合わせを受けてから回答するまでの時間が変わっていないことがあります。必要な情報が各所に散らばっている、回答前の確認が一人へ集中している、同じ内容を別の管理表へ転記しているなら、文章作成だけを速くしても仕事全体は大きく変わりません。

業務活用として見るときは、AIを使った回数ではなく、その前後を含む仕事の流れを確認します。どの作業が減ったか、待ち時間は変わったか、間違いは増えていないか、別の担当者でも再現できるか。そこまで見て初めて、会社の仕事にAIが組み込まれたかを判断できます。

AI活用を5つの段階で考える

AI活用は、全社一斉に高度な仕組みへ移るものではありません。最初は触って特徴を知り、個人の仕事を手伝ってもらい、必要なら既存ツールや業務の流れへつなげます。うまくいった使い方を共有して、初めて会社の仕組みとして残ります。

図解1|生成AI活用の5つの段階
  1. 01触ってみる質問・遊び・画像生成で特徴を知る
  2. 02仕事を手伝ってもらう文章・要約・整理・アイデア出し
  3. 03既存ツールと組み合わせるExcel・表計算・フォームで使う
  4. 04業務へ組み込む通知・帳票・更新などへつなぐ
  5. 05社内で再現するルール・共有・教育・手順を残す

一本道ではありません。全社員が同じ段階へ進む必要もありません。対象業務に必要なところまで進めます。

会社の中でも、使う人や仕事によって段階は違います。企画担当者はAIとの対話で考えを整理するだけで十分かもしれません。事務担当者は表計算の関数づくりまで進む。フォームを頻繁に使う部署は、その後の通知や帳票作成までつなげる。この違いは問題ではありません。

大切なのは、段階の高さを競うことではなく、解決したい仕事に合っているかです。必要以上に自動化すると、運用や確認が複雑になり、かえって担当者が困る場合があります。今の課題が解決できる地点を一つずつ見つけます。

AI未経験なら、最初は「おもちゃ」として使い倒してみる

生成AIを使ったことがない人へ、最初から「業務改善の成果を出してください」と求めると、質問すること自体が難しくなります。何を入力してよいか、どの程度信じてよいか、どのように頼み直せばよいかが分からないためです。

最初は仕事から離れても構いません。夕食の献立を相談する、旅行の予定を考える、趣味について質問する、自分が書いた文章を別の言い方に直してもらう、クイズや画像を作る、自分の意見へ反対意見を出してもらう。答えを見ながら、条件を足したり、違う案を求めたりします。

遊んでいると、「曖昧に聞くと曖昧な答えになりやすい」「条件を伝えると答えが変わる」「自然な文章でも内容が正しいとは限らない」「考えを整理する相手として使いやすい」といった特徴が体感できます。この感覚は、業務で安全に使うときの土台になります。

遊ぶ段階でも、入力してよい情報の範囲は守る

試しに使う場合でも、顧客名、個人情報、未公開の売上、取引条件、社内だけの資料などを、そのまま入力してよいわけではありません。まず公開情報や架空の内容で試します。会社で使う段階では、利用サービスの規約やデータの扱いを確認し、入力してよい情報を決めます。

次に、自分の仕事を一つ手伝ってもらう

AIの特徴が分かってきたら、自分が普段行っている仕事へ持ち込みます。最初から部署全体の仕組みを変えるのではなく、自分で内容を確認でき、間違っても元に戻せる作業が向いています。

例えば、会議メモを論点ごとに整理する、長い資料の要点を抜き出す、顧客向け案内文の下書きを作る、複数案の違いを表にする、考えている企画の抜けを指摘してもらうといった使い方です。AIが出した内容を完成品として扱わず、自分の目的や事実と照らして直します。

AIとのキャッチボールで、自分の考えを広げる

生成AIは、まだ言葉になっていない考えを整理する相手として使えます。「この案の弱いところはどこか」「反対する人は何を心配するか」「別の選択肢はあるか」「判断するために足りない情報は何か」と問いかけると、一人で考えていたときとは違う角度が見つかります。

ただし、キャッチボール自体を目的にしません。話して終わるのではなく、次に何を確認し、何を作り、誰と相談するのかへつなげます。企画なら簡単な案を作る。集計なら実際の表で一つ試す。問い合わせなら代表的な数件を使って分類方法を確かめる。会話を現実の作業へ移します。

図解2|チャットで終わるAIと、仕事につながるAI

チャットで終わる

質問回答終了

仕事へつなげる

困りごと相談・整理作業出力人が確認次へ

すべての会話を自動化へつなげる必要はありません。業務改善が目的なら、会話の後に実際の作業と確認を置きます。

社内で困っていることを、そのままAIへ相談してみる

AIへの質問を考えるとき、難しいプロンプトの型から始める必要はありません。まず、普段の会話と同じように、困っている仕事を説明します。

すぐ解決策を求めるだけでなく、問題を整理してもらう使い方も有効です。「何を追加で確認すべきか」「この仕事の開始と終了はどこか」「人が判断すべきところはどこか」と聞けば、業務を見直すための質問が得られます。

候補がいくつも出たら、毎週・毎月繰り返している、手順がある程度決まっている、結果を自分で確認できる、失敗しても元へ戻せる仕事から選びます。反対に、契約や採用の最終判断、顧客への重要な回答、元に戻せない一括更新などは、最初の練習には向きません。AIに任せられそうかだけでなく、安全に試して違いを確かめられるかで対象を絞ります。

会社の仕事を理解してもらうには、人間側の説明も必要

AIは、会社の事情を最初から知っているわけではありません。何をしている会社か、誰のための仕事か、現在どう進めているか、どこで困っているか、変えたくないことは何か、最終的にどうなればよいかを伝えます。

これは難しいプロンプト技術ではありません。自社の仕事を言葉にする作業です。説明しようとしても言葉にできない部分があれば、そこが社内でも共有されていない可能性があります。AIへ伝える準備そのものが、業務の棚卸しになることもあります。

現在の業務を一つずつ確認する方法は、第4稿の「中小企業のDXは何から始める?」で詳しく整理しています。紙や個人のパソコンだけに情報がある状態より、必要なデータが適切に共有されている状態の方が、AIや自動処理を組み合わせやすくなります。

Excel・GoogleスプレッドシートとAIを組み合わせる

中小企業の生成AI活用で、身近な入口になるのがExcelやGoogleスプレッドシートです。AIが表計算ソフトの代わりになるのではありません。分からない関数や集計方法を相談し、これまで使えていなかった機能へ手を伸ばしやすくなる点に価値があります。

例えば、「A列の商品コードが別シートにあれば、その行の価格を表示したい」「日付ごとの売上を月別にまとめたい」「重複した顧客データを確認したい」と、表の列や実現したい結果を説明します。AIから関数案や操作手順を受け取り、小さなコピーで結果を確かめます。

困っていることAIへ相談できること人が確認すること
条件ごとの判定を手入力しているIF関数や条件式の案全条件を正しく判定するか
別シートから情報を探しているXLOOKUP、VLOOKUP、FILTER等の使い分け検索キーと未登録時の表示
毎月同じ集計表を作っているQUERY関数、ピボットテーブル、集計構成集計範囲、重複、合計値
CSVの表記がそろっていない日付・文字列の整形方法元データを壊していないか
数字を見ても判断しにくい表やグラフ、ダッシュボードの構成案何の判断に使う数字か

関数や計算式は、小さなデータで検算する

AIが作った関数は、もっともらしく見えても、自社の表の構造や例外条件に合わない場合があります。まず元ファイルのコピーを作り、結果が分かっている数件で試します。空欄、重複、日付形式、全角・半角、未登録の商品など、実際に起きる例外も確認します。

売上や原価、請求などの数字は、合計が合っているかを別の方法でも確かめます。数式の作成が速くなっても、正しさを確認する責任までAIへ移るわけではありません。

Googleフォーム、スプレッドシート、GASを一つの仕事としてつなぐ

Googleフォームを使うと、申込や日報、アンケートなどの回答をスプレッドシートへ保存できます。それだけでも、紙からの転記や入力形式のばらつきを減らせる場合があります。

しかし、回答が入った後に、担当者が表を開き、内容を確認し、受付票を作り、メールを送り、管理表へ転記しているなら、その後にも繰り返し作業が残っています。ここでGoogle Apps Script(GAS)を使うと、フォーム送信などをきっかけに、複数のGoogle Workspaceサービスを連携させることができます。

Google公式のApps Scriptページでは、Apps ScriptをGoogle製品間の作業を統合・自動化できるクラウド上のJavaScript環境と説明しています。Sheets、Forms、Docsに機能を追加し、DriveやGmailなどのサービスとも連携できます。また、インストール型トリガーの公式資料では、フォーム送信、シート編集、時刻などをきっかけに処理を実行できることが示されています。

図解3|Googleフォームの入力を、その後の仕事へつなげる
Googleフォーム申込・日報・受付
スプレッドシート回答を保存・一覧化
GAS条件分岐・加工・実行
必要な出力Docs・PDF・メール・管理表
生成AIが補助できること処理の整理・関数案・コードのたたき台・エラー調査

実現できる処理は、利用環境、権限、サービスの仕様によって異なります。重要な業務はテストと運用設計が必要です。

フォームに入力された後の作業まで書き出す

仕組みを考えるときは、「フォームを作る」ことを目的にしません。誰が入力し、その後に誰が何を判断し、どの書類が必要で、誰へ連絡し、いつ完了するのかまで確認します。

例えば、申込フォームの回答を受けた後、内容によって担当部署を分ける、定型の受付票を作る、担当者へ通知する、申込者へ受付メールを送る、管理表の状態を「受付済み」にする、といった流れが考えられます。これは特定企業の導入事例ではなく、仕組みを考えるための一例です。実際には自社の確認や例外処理を先に整理します。

一つの仕事を最初から最後まで見る考え方は、第2稿の「中小企業の業務改善は何から始める?」とも共通します。AIやGASを入れる前に、なくせる転記や不要な承認がないかを確かめます。複雑な仕事をそのまま自動化すると、複雑な仕組みが残るためです。

AIによって、小さな自動化を試すハードルは下がっている

以前であれば、複雑な関数、VBA、GASなどに詳しい人へ依頼しなければ試せなかった作業の一部を、AIへ相談しながら自分で検討できるようになりました。「フォームが送信されたら担当者へメールを送りたい」と日本語で伝え、必要な処理の順序やコードのたたき台を作ってもらうこともできます。

ここで目指すのは、全社員がプログラマーになることではありません。これまで「分からないから諦める」しかなかった小さな改善について、何が必要かを知り、試作し、専門家へ相談するときも具体的に説明できるようになることです。

AIによって専門家が不要になるわけでもありません。顧客情報や契約、会計に関わる処理、複数システムの連携、止められない業務、大量データ、複雑な権限管理では、設計、セキュリティ、テスト、保守の専門知識が必要です。自社で試せる範囲と、専門家へ任せる範囲を分けます。

AIが生成したコードを、そのまま本番で実行しない

AIが作ったGASコードは、実行前に何を読み、何を書き換え、誰へ送信するのかを確認します。元データやスプレッドシートのコピーで試し、テスト用の宛先を使い、想定どおり動くかを確認します。削除や一括更新を含む場合は特に慎重に扱います。

Apps Scriptのインストール型トリガーは、原則として作成者の権限で動きます。どのアカウントを所有者にするか、異動や退職時にどう引き継ぐか、どのサービスへの権限を許可しているかも確認します。エラーが起きたときに誰が気づき、どこまで手作業へ戻せるかも運用の一部です。

最初からAIに全部考えさせない

企画、チラシ、事業案、会議資料などを、何も伝えず「全部考えて」と頼むと、整ってはいるものの、自社らしさや現場の条件が薄い内容になりやすくなります。

最初に、人が何を実現したいか、誰へ届けたいか、何を最優先にするか、守りたいものは何かを考えます。まとまらなければ、紙へ手書きしても構いません。その上で、「整理してほしい」「抜けている視点を出してほしい」「別案と比較してほしい」「読者に伝わる文章へ直してほしい」とAIへ渡します。

人が考え、AIが広げる。AIが整理し、人が決める。この役割分担を崩さなければ、AIの速さを使いながら、会社として大切にする判断を残せます。

AIに補助させる仕事と、人が担う仕事を分ける

AIへ任せる範囲を決めるには、作業と判断を分けます。下書きや整理はAIへ任せやすくても、顧客へ送るか、契約するか、採用するかといった最終判断は人が担います。仕事によっては、下書きの段階でも機密性や正確性への配慮が必要です。

図解4|生成AIと人の役割を組み直す

AIに補助させやすい

速く広げ、整理する

  • 下書き
  • 要約
  • 分類
  • 比較
  • 関数案
  • コード案
  • 定型文
  • アイデア展開

人が担う

目的を持ち、判断する

  • 目的
  • 最終判断
  • 責任
  • 事実確認
  • 顧客との対話
  • 安全・品質
  • 経営判断
  • 価値観の決定

AIに人の仕事を丸ごと渡すのではなく、仕事の中で担う役割を分ける

人が確認する場所を、先に決めておく

AIを使った後に「念のため確認する」だけでは、誰が何を見るか曖昧です。数値なら元データと合計、文章なら事実と表現、コードなら処理内容と権限、顧客対応なら相手の状況と会社方針というように、確認項目を決めます。

確認する人も明確にします。作成者自身でよい仕事、責任者の確認が必要な仕事、専門家へ確認すべき仕事を分けます。AI活用を増やすほど、確認の役割も業務の中に組み込む必要があります。

生成AIは間違える前提で使う

生成AIは、自然で読みやすい文章の中に、誤った事実や存在しない情報を混ぜることがあります。自信があるように見える回答でも、正しさが保証されているわけではありません。

数値、法律、契約、制度、補助金、医療、税務、公的情報、顧客へ提出する重要情報は、必ず元の資料や専門家を確認します。Web検索機能が付いているAIでも、参照先が正しいか、情報が最新か、引用内容と結論が一致するかを人が確認します。

社内資料を要約させる場合も、重要な条件が抜けていないかを原文と照合します。AIの回答は、作業を始めるためのたたき台、比較材料、確認項目の候補として使い、最終成果物との間に人の確認を置きます。

会社で使うなら、最低限のルールを決める

「危険だから全面禁止」とするだけでは、社員が個人判断で使い始め、実態が見えにくくなることがあります。一方、「便利だから自由に使ってよい」とすると、個人情報や機密情報を入力する危険があります。安全に使える範囲を会社として決めます。

2026年3月31日に公表された経済産業省・IPA/AISI「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」では、AI利用者を含む関係者に対し、人間中心、安全性、プライバシー保護、セキュリティ確保、透明性、教育・リテラシーなどの観点を示しています。中小企業で最初から重い規程を作る必要はありませんが、少なくとも次の項目は決めておきたいところです。

個人の便利な使い方から、会社で再現できる仕事へ

一人の担当者だけがAIを使いこなしても、その人が休むと元の方法へ戻るなら、会社の仕組みにはなっていません。業務利用へ進めるには、何に使い、どんな情報を与え、何がうまくいき、どこを人が確認したかを共有します。

最初から大規模なAI研修を行わなくても構いません。定例会議で毎月一件、「AIを使って変わった仕事」を共有するだけでも始められます。便利だった使い方だけでなく、間違えた例、期待した結果にならなかった例、人の確認が必要だった場所も共有します。

2026年版中小企業白書の概要では、従業員のITツール活用を促す研修・勉強会や、部門間連携を行っている企業の方が、デジタル化で想定した効果を得た割合が高い傾向も示されています。AIについても、一人の技術に閉じず、学びと業務のつながりを社内へ残す視点が欠かせません。

プロンプト集より、成功した仕事の流れを残す

「使えるプロンプト100選」のような言葉だけを集めても、自社の仕事では使いどころが分からないことがあります。残したいのは、AIへ入力した一文だけではなく、仕事全体の流れです。

問い合わせ返信なら、目的、使う情報、AIへ依頼する内容、人が確認する項目、送信する人、記録する場所まで残します。売上集計なら、元データ、使う関数、例外、検算方法、完成した表を誰が何の判断に使うかまで共有します。

この形なら、別の人が同じ仕事を行うときも再現しやすくなります。AIサービスや画面が変わっても、仕事の目的と確認方法は残ります。

AI活用の成果は、導入数ではなく仕事の変化で見る

ChatGPTのアカウントを作った、研修を受けた、プロンプト集を配った。それらは開始の記録ですが、業務改善の成果そのものではありません。

2026年版中小企業白書 第2部第2章では、省力化投資でAI活用に取り組んだ1,685社へ目的を尋ねたところ、「業務時間の節減」が84.5%、「人手不足の解消」が40.5%、「業務の属人化解消」が40.1%でした。複数回答のため合計は100%になりません。AI活用を人員削減だけで捉えず、時間、担い手、仕事の継続性を見ることができます。

自社では、集計時間、資料作成時間、問い合わせへの回答時間、転記回数、修正回数、質問回数など、対象業務に合う変化を一つ決めます。それと同時に、間違いが増えていないか、担当者が無理なく使えるか、顧客対応や判断へ使える時間が増えたかも確認します。

数字が良くても、確認負担が別の人へ移っただけなら改善とは言い切れません。数字と現場の声を一緒に見て、続ける、直す、やめるを判断します。

30日で、一つの業務に生成AIを入れてみる

会社全体のAI導入計画を作る前に、対象業務を一つ選び、30日で試します。失敗しても戻せる範囲に絞り、変化を確認できるようにします。

図解5|30日で生成AIを実務へつなげる
  1. 1週目触って特徴を知る未経験者は遊んで慣れる。経験者は面倒な仕事を記録する。
  2. 2週目困りごとを一つ選ぶ集計、資料、問い合わせ、日報、フォーム処理などから選ぶ。
  3. 3週目既存ツールと試す文章、関数、表、フォーム後の処理などをコピーで試す。
  4. 4週目結果と確認方法を見る時間、正確さ、継続性、再現性、人の確認場所を振り返る。
続ける場合使い方・確認項目・担当・例外を残し、次の一つへ広げる

1週目|AIを使い倒し、面倒な仕事を記録する

初めての人は、公開情報や架空の内容でAIへ何度も質問し、答えを直してもらいます。すでに使っている人は、日常業務の中で繰り返している作業、判断に迷う作業、情報を探す作業を記録します。

2週目|改善したい困りごとを一つ選ぶ

対象を「経理をAI化する」のように広くせず、「毎月の売上CSVを店舗別に集計する」「フォーム回答から受付票を作る」のように開始と終了が分かる仕事にします。現状の所要時間、件数、間違い、担当者も簡単に確認します。

3週目|AIと既存ツールを組み合わせて試す

Excelの関数をAIへ相談する、Googleスプレッドシートの集計表を設計する、問い合わせ文の分類を試す、フォーム送信後の処理を書き出してGASのたたき台を作るなど、一つだけ試します。本番データへ直接適用せず、コピーやテスト用データを使います。

4週目|仕事がどう変わったかを確認する

時間は減ったか、間違いはなかったか、続けられるか、別の人でも使えるか、どこに人の確認が必要かを振り返ります。うまくいかなければ、AIの性能だけでなく、元の業務が整理されていたか、与えた情報が足りたか、対象が大きすぎなかったかも確認します。

続ける場合は、入力例、手順、確認項目、担当、例外時の対応を残します。その後で対象を広げるか、専門家へ相談するかを判断します。

社内だけで用途を決められないときは、今の仕事から外部と整理する

生成AIの情報は多く、機能も変化します。新しいサービスを追いかけているうちに、自社で何を改善したかったのかが分からなくなることがあります。また、毎日行っている仕事ほど、どこがAIに向くかを社内だけでは見つけにくいものです。

外部支援を使う価値は、AIサービスを売ってもらうことだけではありません。現在の仕事を経営側と担当者から聞き、繰り返し、待ち、転記、判断の場所を整理する。その上で、AIとの対話で十分か、Excelやフォームと組み合わせるか、GASなどで流れをつなぐか、専門システムが必要かを比較できます。

キャンバスM&Fは、最初から専用AIシステムを前提にせず、今ある業務や道具を確認し、必要なところへ生成AIを組み合わせる立場です。実装をすべて代行するのではなく、企業側の担当者や必要な専門パートナーと役割を分け、使った後の確認と社内定着まで考えます。

まとめ|AIに何を聞くかから、AIで仕事をどう進めるかへ

中小企業の生成AI活用は、高価なシステムや難しいプロンプトから始める必要はありません。初めてなら遊びながら特徴を知り、その後、会社で困っている一つの仕事へ持ち込みます。

  1. まず触る — 遊びながら、得意なこと、曖昧さ、間違う可能性を知る
  2. 困りごとから考える — AIの機能ではなく、会社で滞っている仕事を一つ選ぶ
  3. 会話を作業へつなげる — 相談、整理、作業、出力、人の確認までを一つの流れにする
  4. 既存ツールを活かす — Excel、スプレッドシート、フォームなどへAIの助けを加える
  5. 小さく試す — コピーとテストデータで、結果と権限を確認する
  6. 人が決める — 目的、事実、品質、安全、最終判断と責任は人が担う
  7. 安全な範囲を決める — 利用サービス、入力情報、確認者、問題時の相談先を共有する
  8. 仕事の流れを残す — プロンプトだけでなく、目的、手順、確認方法を社内で再現できる形にする

AIとのキャッチボールは、考えを広げる入口です。そこから実際の表、フォーム、資料、問い合わせ対応へ移し、結果を確認する。うまくいった仕事を社内へ残し、次の一つへ広げる。その積み重ねが、中小企業にとって現実的な生成AIの業務活用になります。

初回無料相談

AIを何に使えばよいか分からない場合は、今の仕事から一緒に整理します

キャンバスM&Fでは、福井県を中心とする中小企業の経営・事業・業務改善について、初回無料相談を行っています。

「ChatGPTを使っているが仕事には活かせていない」「Excelやスプレッドシートをもっと使いたい」「フォーム回答後の処理を見直したい」「社員向けのルールをどう作ればよいか分からない」といった、相談内容がまだ整理できていない段階でも構いません。

AIの導入を前提にせず、現在困っている仕事を一つ確認し、今の道具で試せることと、専門家が必要なことを一緒に整理します。

契約をその場で決めていただく必要はありません。

無料相談を申し込む

参考にした公的・公式情報